私たちの農場でも、これまでの経験を生かして、トマトハウスの担当者としてがんばっています。今まで研究してきた水耕栽培とはちがい、土を使った有機栽培ということで戸惑いはあるようですが、美味しいフルーツトマトを育てるために毎日トマトの管理に汗を流しています。
大野さんのトマト栽培レポート
私が板倉農産さんと出会ったのは、昨年のちょうど今頃だったと思います。そのときは今ここ登米郡に住んでいることなど想像もつかず、どんよりと毎日ルーティンワークに明け暮れるOL生活に辟易していました。早いものであれから一年、阿部家の農的生活を体験させていただき、本当に貴重な経験を得ることが出来ました。
最も印象に残っているのが空です。春、田植えの時に見た広がる水田とそれに映る柔らかい空の色。猛暑の中の除草作業中見上げた深い広い空、とにかく空が広かった!当たり前のことに思われるかも知れませんが、それだけ、私は空の青さや深みを感じない生活を送ってきたのだと思います。もったいなかった。地面や田の草、作物を見ていたからこそ感じることが出来たのでしょう。登山して見た非日常的な風景の中でなく、日々の生活でそうゆう感覚を持つことができるというのは、私の中で大きな発見でした。
昨年まで働いていた会社でトマトの栽培に関連した仕事をしていた事もあり、一応夏のトマト栽培は担当させていただきましたが、文字通り畑違いで非常に難しかったです。以前の会社では、ガラス温室で無機培地を使って溶液栽培をしていたので、土作りから施肥、病害虫の耕種的防除等、知識があまりない分野のことばかりで、正直戸惑いました。しかしそれだけに学んだ事も多かったと思います。第一、二花房が分化しなかったり、葉カビ病が広がってしまったりと焦ることもしばしばでしたが、都度その時の状況に応じて対処法を教えていただき、土壌栽培の基本的な知識を得ることができました。そして有機栽培について考えるきっかけをもらいました。
有機栽培とは、共生の農業であること、私は数ヶ月の研修期間を経て考えるようになりました。
従来の農業、すなわち化学肥料、農薬を多投し、均質かつ多収量を追及する方法は、作物のみ生育を確保し、その他の土壌中の細菌や害虫類を駆除しており、ある意味排他的です。多くの生命の絶滅の危機が叫ばれている昨今、有機栽培という考え方は大いに注目されてしかるべきです。
板倉農産で研修したことで、有機栽培の意義や先進性、様々な作物の様々な場合での対応といった技術等、他ではできなかったであろう大きな経験を得、今後自分がどういう方向に進んでいくのか、考えるヒントをいただきました。
私は3月からオランダで農業研修することになっています。向こうでも色々なことを感じ、学ぶでしょうが、その時に日本で有機栽培農家で得たものが必ず役に立つと思います。
笑顔の素敵な阿部家の皆さん、ありがとうございました。秋に植えたカブやサンチュを自分で収穫できなかったのが多少残念ですが、この拙い文章をもって私の卒業論文とさせていただきます。