現代人のためのすばらしいビタミン食
米ぬかの栄養素に最初に注目したのは、実は日本人ではありません。オランダ人医師のアイクマンが、1896年に発表した論文が、米ぬかに関する初めてのものといわれています。アイクマンは、鳥類に精白した穀物をエサとして与え続けた結果、脚気のような症状が現れることに気づきました。「精白したエサが原因ならば、精白した際に出たカスを与えてみたらどうだろう」と実践してみたところ、米ぬかの思わぬ効用に気づいたというわけです。
日本では鈴木梅太郎博士が米ぬかの組成を分析して、「ローオリザニン」という成分を抽出することに成功しました。これがビタミンBでした。ビタミンBは、実は米ぬかから発見されたのです。これが不足すると脚気はもちろん、イライラしたり、疲れやすくなったり、肌が荒れて吹き出物がでたりします。このような症状は、ストレス社会に生きる現代人には、つきものとされています。これといって寝つくほどの症状でないため、ついつい見過ごしてしまいがちですが、これは危険なことです。もし心当たりがあるならば、ぜひとも米ぬかにチャレンジしてみてください。絶対に大きな効果があるはずです。かつて、各職業分野別に、健康調査が行われた事がありました。このとき、もっとも健康だと判断されたのは、サラリーマンでも自営でもありませんでした。なんと刑務所や拘置所にいる人々だったのです。その秘密は規則正しい生活と質素な食事にありました。毎朝決まった時間に起床し、適度な労働と運動を行い、夜更かしせずに決まった時間に寝る。このような生活が、体に悪いわけはありません。ここで注目したいのは、彼らが食べていた食事です。もちろん、豪華なメニューではありませんし、過食になることもありません。麦入りのご飯とみそ汁、野菜などの煮付け、漬物といった質素な献立です。いわば、昔ながらの一般庶民の食事です。塀の外側では飽食を繰り返し、多くの人が成人病で苦しんでいるというのに、彼らは質素な食事のために、健康な体を知らず知らずのうちに作っていたのですから、塀一枚といっても、大変な隔たりです。
だからといって、目の前においしい食べ物がたくさんあるのに、それを食べずに「質素な食事に切り替えろ」と言われても、なかなか難しい話しです。それに比べたら、米ぬかを上手に食べて日常の食生活の欠点を補うのは、難しいことではありません。つまり、米ぬかは、現代人のための新しい“栄養剤”と言えるのではないでしょうか。